手術のあいだはラウンジの窓のひざしのあたたかいところで母とジュースなどのんでくつろいでいた。
病院というのはそこらじゅう、とにかくあたたかくしてある。免疫力をたかめるためか?
携帯電話で話す暗い声がずっと聞こえていた。テレビのまえに座っている患者のものだった。
僕たちは死病の付き添いではないから、別にあえていま話し合うべきことなどなかった。
しきりに前立腺のことばかり考えていた。
前立腺という臓器はふしぎなものだとおもう。
ふたつの分泌物どうしを混合させる役割のある箇所だというが、どうせひとところのくだをとおってでてくるのだからそんなめんどうな工程をはさむまでもないはずだ。
あるいは進化の過程でとりのこされた臓器のなごりかもしれない。むかしは大変重要な臓器だったが、いまの人間たちにとっては特に、ということかもしらん。
しかし、前立腺をとってしまうと射精は不可となる。これは医師のくちなどからとうぜんでしょうといわんばかりにへいぜんとかたられるのですが、なんかちょっとむじゅんしてませんか? 特に大事な臓器ではないというのに、摘出して以降は子供を残すことも自然にはままならないという。