試論

恥さらしによる自我拡散改善法を中心に

前立腺②

 
 そのほかにも病院でのほどこしはあまりよいものではなかったらしく、父はあとあとこころよくなかったようなことを評した。入院中の世話をしていた母によると、父は出先での例にもれず非常に態度が悪かった、それで医者や看護師らも仕事とはいえ不快だったので、ぞんざいに扱ったのだろうとのことだった。

 父は実に不器用な人間で、ひとに良い印象を与える手順を半世紀生きてもなお悟ることはなかった。彼が面倒見がよく質素な田舎娘である母と結婚し三児を設けられたのは、家という制度が色濃かった時代のおかげといってもよい気がする。

 ストーカーや恋愛関係のもつれにまつわる事件をテレビのニュースなどから伝聞するたびに、これは時風もおおきいとつい思ってしまう。いまの時代に父が生まれていたらこのようになっていたかもしれない……金がなく意地も汚い男が、こんなに優しい母と出会ったのは、運がよかった。